彼女の作り方を忘れたら[原創]

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宅急便を届けに来た配達員が女性だと戸惑う心理

   

玄関のチャイムが鳴って、ドアを開けると若い……中年手前の女性がぺこりと頭をさげて、
「毎度ありがとうございます。

宅配弁当をお届けにまいりました」
「あれ、変わったの」
きのうまでは、熊のように大柄な男性が届けていました。

「はい。

今日から私が配達いたします」
彼女はクーラーボックスからとりだした弁当の容器を二個、私にさしだしました。

「ありがとう」
「これからもよろしくお願いします
愛想のいい笑顔のよく似合う女性でした。

私は画家で、ひとり者ゆえつい不規則になりがちな食生活を考えて、栄養バランスを考えた宅配弁当をひと月前から続けていました。

昼と夜の分があるので、表に食べに出かける手間が省けてそのぶん絵の制作に没頭できるというものです。

しばらくすると、ふとさっきの彼女の笑顔が頭によみがえってきました。

離れて時間がたつほど、印象が強くなる女性がいるものですが、彼女がまさにそうでした。

独身だろうか。

年齢的にみてその可能性は薄そうですが、もしかしたらということもありえるので、私は期待を捨てずに明日の朝をまつことにしました。

そして翌朝、玄関のチャイムが鳴りました。

「毎度ありがとうございます」
「ありがとう」
すると彼女が、
「絵描きさんなんですか」
「ええ、まあ。

売れない絵描きです」
「私、絵を見るの好きなんです」
「よかったらあがって、みていかないですか」
「まだ届けるお弁当が残っていますので。

土曜日にお伺いしてもいいですか」
「どうぞ、どうぞ」
土曜と日曜は弁当が休みの日で、彼女も非番なのでしょう。

私は顔にはそれほど出しませんでしたが、ほんとは空の上まで飛び上がりたいぐらい喜んでいたのでした。

わざわざ家に見に来るというからには、彼女はきっとひとり者……と私は一人合点していました。

土曜日といえば明後日です。

私は、彼女が家に来たときにみせるための絵を、物置から出して壁にたてかけました。

彼女に座ってもらうためのソファのカバーを洗濯しました。

そのソファに座った彼女をモデルにして絵を描くのもわるくはない。

私は早くも先走って、ヌードになった彼女を思い描いていました。

そして当日の午後、チャイムが鳴りました。

飛んで出たいところを、私は自分に落ち着けといいきかせながら、わざっとゆっくりと玄関に出ていきました。

「こんにちは」
両側に中学生らしい男の子と小学生の女の子二人にはさまれた彼女が、明るく挨拶しました。

「私の子供たちにもみせたくてつれてきました」
私は、どうぞとうぞと沈んだ声でいいながら、彼女たちを招きいれていました。

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